しろくまライブラリー

きなこわらびもち(うさぎ)と元図書館司書2匹の日常。本、映画、ご飯、色々あるよ。

【小説】「クラウドガール」金原ひとみ

姉妹にしか分かりえない濃密な共感と狂おしいほどの反感

クラウドガール 金原ひとみ(著/文) - 朝日新聞出版

基本情報

タイトル:クラウドガール

著者:金原ひとみ

出版社:朝日新聞出版

カテゴリー:小説

満足度:★★★☆☆/5

映像化:なし

あらすじ

 杏と理有。二人は外見も性格も真逆の姉妹。母の死にまつわる秘密を共有し、現在は姉妹二人で暮らしている。母に対する思いと互いに対する思い。それぞれがそれぞれの思いを抱き続けてきたが、姉の理有がマレーシア留学から帰国したのを境に、二人の関係は少しずつ変化していく。

登場人物

*中城杏(なかしろ あん)

理有の妹。16歳の高校生だが、学校へ行かなかったりクラブで遊んだりと、自由奔放な性格。自分の身の回りのことは、理有へ依存している部分がある。

*中城理有(なかしろ りう)

杏の姉。大学生。聡明な性格で、決してハメを外さない。子供の頃から、家事や事務手続きといった家のことを、母の代わりに全て一人で担っている。半年間マレーシアへ留学していた。

*中城ユリカ(なかしろ ゆりか)

作家で、杏と理有の母。2年前に他界している。生前は、ひたすら小説執筆に没頭していた。

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コメント 

正直言って、ふぇれっとは金原ひとみさんの小説が結構好きです。これまでも何冊か読んできました。社会的な外れ者を拾い上げて、途中で散々危うい感じになりつつ、最後にわずかな希望を示してくれるところが魅力だと思っています。

今作は、ざっくり言うと「姉妹の確執」が物語の主軸です。兄弟姉妹というのは、子供の頃はまだしも、年齢が大きくなってくると変に意識してしまう場合もあるものです。それは時に、嫉妬、羨望、反抗心だったりします。同性の兄弟姉妹がいる人には、杏と理有の気持ちがよく刺さるのではないでしょうか。

タイトルに含まれている「クラウド」という単語には、「曇」という意味と、サーバー上の「クラウド」という意味が掛け合わされています。ふぇれっとは読み終わるまで、サーバーの方のクラウドに気がつきませんでした。不覚。

 

 

 

”自分が大切に思うものを、大切な人が大切だと思っていないだけで、人は強烈に傷つくのだ。”

 

byふぇれっと